松村謙三関係文書目録公開に当たって
本目録は、松村謙三(1883-1971)及びその周辺の人物が残したと思われる記録のうち、2020年8月末日現在、東京鷺宮のご遺族方が保管されていたものの仮整理目録である。ここには東京に残された文書類のほぼ全て(ごくプライベートなものを除く)が含まれていると思われる。
こうした資料のほかに、筆者が整理中の富山県に保管されている文書類の目録も、松村謙三記念館(南砺市)と協力しながら順次公開してゆく予定である。
なお、現状では、本文書に収めた原文は非公開であり、閲覧についても行っていない。もちろん、最終的な目標は学術研究上での利用にある。鋭意進めていることを付記する。
さて、今回、公開する目録の総点数は409点(プライバシーなどに配慮した欠番を含む)である。資料の収集は2016年から19年度に数度に分けて武田知己(大東文化大学法学部教授)が行った。ご協力いただいた故松村進様、平山久雄様、濱本なほ子様、増田美千代、田中俊六・奈津子様に感謝申し上げる。また整理に協力いただいた金子貴純氏、小保方海登氏(大東文化大学大学院生・学部生)にも感謝申し上げる。
以下では、資料の特徴を以下述べたい。
第一に昭和30年代のオープンリール・カセットテープが比較的まとまって残されていることである。座談の記録以外にも河野洋平氏、細川護熙氏など当時の若手議員への講話なども興味深い(テープ起こしをする予定である)。
第二に戦後のスクラップブックや雑誌記事が系統立てて比較的まとまってのこっていることである。松村の肉声は、ある時期より日中関係と反主流派としてのそれに集中される傾向があり、時折の政策案や時局観に関する肉声を細かく追うには、こうしたメディアの記録を渉猟する必要がある。ご遺族はじめ、秘書が作成したであろうこうしたテーマ別のスクラップは貴重である。また、昭和30年代の日記や書簡がほとんど残されておらず、テープ、スクラップはそれを代替するものとなりうる。
第三に、町田忠治、永井柳太郎、笹山茂太郎など、著名な政治家の書簡が比較的まとまって残されていることである。しかし、福光松村家所蔵分、福光図書館保管分にも、永井柳太郎、片口安太郎の書簡が収蔵されていることは確認済である。
第四に、戦後の訪中時の事務史料などが比較的残されていることである。周恩来など、要人への書簡(草稿や写し)は貴重である。なお、廖承志が松村に訪中を促す書簡(23-3)は原文を松村謙三記念館(南砺市)に寄贈することとし、本資料には複製を残すこととした。また、訪中時の支援者などからの書簡なども当時の時代相を知る上で参考になる。
第五に、アルバム類も(一部重複があるが)比較的系統立てて残されている。選挙関連の名簿なども支援者の情報を知る手掛かりとして貴重である。
第六に、濱本なほ子様のご尽力で、昭和17年の日記が発見されたことは大きな成果である。
本整理に当たっては、一般財団法人櫻田会からの助成を得た。本目録はその成果の一部である。記して感謝申し上げる。
2020年8月21日 松村謙三没後49年目の日に
武田 知己